
こんにちは。ゆずぽんです。
今日は本業の薬剤師として真面目なお話をしたいと思います。
正直なところ、ここまで広がるとは思っていなかった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
イタリアやアメリカの医療崩壊の報道を目の当たりにすると、日本も同じ状況になったらどうしよう…と不安に思われる方も多いかと思います。
さらに、今回の騒動の中心となっているCOVID-19は新型のコロナウイルスが原因のため、解明されていない部分がまだまだあり、不確定な情報が飛び交うことが、より不安を煽る結果となっているように感じます。
しかし、どんな状況・どんなウイルスであろうとも、感染拡大を防ぐための大原則は変わりません。
それは「感染予防」と「拡散防止」です。
毎日様々な情報を耳にしていると、知識の混乱が起こり、本当に大切な部分がわからなくなってしまう危険性もあります。
そこで、今回は二つの大原則に沿って忘れてはいけない大切なことをまとめたいと思います。
新型コロナウイルスの情報について
不確定情報が多いコロナウイルスですが、現在わかっていることをQ&A形式で厚生労働省がまとめています。
書かれていることを簡単にまとめると・・・
- 新型コロナウイルスは接触・飛沫で感染し、空気感染の可能性は低い。
- 三密(密集・密接・密閉)が感染のリスクを高める。
- 不顕性感染(感染しても無症状の状態)もあるため、気づかないうちにウイルスを拡散している可能性がある。
- 手洗い・うがい・消毒用エタノールでの手指消毒が有効。
- マスクは密集施設では有効だが、屋外や密集しない場所では使用する意義が低い。
- マスクは感染予防ではなく感染拡大防止の意図で積極的に使うべき。
ここで大切なことは、不顕性感染がおこりうるということです。
不顕性感染は新型コロナウイルス特有のものではなく冬に流行するインフルエンザなどにも起こりうる現象なので、珍しいものではありません。
実際に無症状の感染者が確認されていることから、自分はまだ感染していないから予防策だけで大丈夫という考えではなく、すでに自分も感染しているかもという意識をもち拡散防止策も積極的に行うことが大切です。
「不要不急の外出を控える」ことは感染防止だけでなく、拡散防止にもつながります。また、出かけるときは越境しないなど行動範囲を狭めることでも拡散を防止することが可能です。
新型コロナウイルスは今のところ空気感染の可能性は低いといわれています。つまり、ウイルスが空気中を漂って、勝手に拡散していくことは考えにくく、人が移動することでウイルスを運んで拡散していることになります。
感染爆発から医療崩壊が起こる前にみんなで協力して拡散防止に努めましょう。
それでは実際にどんな方法が有効なのか?「感染予防」と「拡散防止」にスポットをおいて紹介していきます。
感染予防
まずは感染予防についてです。
ここで大切なのは
- 手洗い
- うがい
- 消毒
- 三密を避ける
ですね。
消毒についてですが、新型コロナウイルスはエンベロープウイルスなので「消毒用エタノールが有効である」という情報が流れたため、消毒用エタノールは入手困難な状態が続いてます。ゆずぽんは薬局勤務ですが、医療現場にいても納入できる気配すらありません。
エンベロープウイルス

エンベロープという防御膜をまとっている。膜は主に脂質からできているため、脂質を溶かす性質の石鹸やエタノールで容易に破ることができる。
インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、B・C型肝炎ウイルス、エイズウイルス、風疹ウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス(SARS・MARS・新型コロナウイルス)
ノンエンベロープウイルス

エンベロープという膜をもたない代わりウイルス自体の防御力が強くエタノールは無効。
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルス
そもそも、なぜエンベロープウイルスにエタノールが有効なのか?と言いますと、防御膜であるエンベロープが脂質からできているため、脂質を溶かす性質のエタノールで容易に破ることができるからです。もちろん石鹸にも脂質を溶かす性質があるためエンベロープウイルスには有効です。
本来消毒用エタノールの使用は、頻繁に手洗いが困難な医療現場などで応急的に行う方法で、正しい手洗いを行えば、消毒用エタノールを使う必要はないのです。

消毒用エタノールは前述のとおりエンベローブウイルスには有効ですが、ノンエンベローブウイルスには無効です。それに対し、手洗いは菌を洗い流すという意味ですべての病原菌に対し有効な手段です。今は新型コロナウイルスを意識しがちですが、風邪のウイルスは他にもいるので、他の風邪にかからないよう積極的な手洗いを心がけましょう。
ってことは消毒用エタノールはいらない??
今回の新型コロナウイルスは消毒用エタノールが有効なのは確かです。しかし消毒用エタノールを頻繁に使用すると手荒れがひどくなり皮膚のバリア機能自体を弱らせるリスクもありますので、基本的には手洗いを主体に、消毒用エタノールは「あったら便利」くらいの気持ちで大丈夫です。
- 基本は手洗い。帰宅したらすぐに手を洗いウイルスの持ち込みを防ぐ。
- 消毒用エタノールは外出先で手洗いできないときに応急程度のものと考える。
消毒用エタノールが手元になくても大丈夫!
正しい手の洗い方
正しい手洗いは全ての感染症予防につながる有効手段です。新型コロナウイルスが終息した後も、インフルエンザやノロウイルス予防に正しい手洗いを身につけましょう。

物体に付着した新型コロナウイルスは最長で3日間生きていたという報告もあります。帰宅したら外で付着したウイルスを家のなかまで持ち込まないよう、あちこち触る前にしっかり手を洗いましょう。家の中だけは安全な場所と思いたいものです。
設備消毒には次亜塩素酸ナトリウム水溶液
体に付着したウイルスは手洗い・消毒用エタノールですが、ドアノブやテーブルなどの設備消毒には次亜塩素酸ナトリウム液を使用するのが効果的です。
次亜塩素酸ナトリウムは俗にいう漂白剤で、キッチンハイターやブリーチなどが有名です。
ちなみに次亜塩素酸ナトリウム水溶液はノンエンベロープウイルスにも有効な消毒法です。
- 刺激性が強いため皮膚消毒には絶対に用いないよう気を付けてください。
- 次亜塩素酸ナトリウム液を扱うときはゴム手袋をつけてください。
0.05%以上の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の作り方
一般的な設備消毒に用いる次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は「0.05%」とされています。使う商品によって希釈する分量が違うため、下記の分量を参考に調製してください。
また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は光で分解されやすいため、作り置きはできません。できれば毎日使い切る分量で作るようにしましょう。

- 家事用手袋を着用して行ってください。
- 金属は腐食することがあります。
- 換気をしてください。
- 他の薬品と混ぜないでください。

最近、除菌水として「次亜塩素酸水」と呼ばれるものが流通しています。
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液はどちらも除菌に有効な成分は「次亜塩素酸」ですが、性質が全く違います。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液⇒強アルカリ性で皮膚を溶かすため、触れることはできません。当然人体にしたいしての消毒はできません。
次亜塩素酸水⇒次亜塩素酸を水に溶かしたもので、弱酸性の性質のため人体に影響が少ないといわれています。実際に安全性試験も行われています。
次亜塩素酸水自体の安全性は国も認めているのですが・・・それはすべての次亜塩素酸水ではなく、特定の製法で作られたものであるということがポイントです。
一般流通しているものの中には次亜塩素酸ナトリウムを原料として炭酸等で中和して製造しているものや、次亜塩素酸ナトリウムにpH調整剤を添加して次亜塩素酸水として販売しているものもあるようです。このような製法で作られた次亜塩素酸水は国が安全と認める次亜塩素酸水とは違いますので、流通している商品すべてが安全とは思わないでください。
また、次亜塩素酸水の皮膚に対しての殺菌効果については賛否あり、使用方法によってはあまり効果がない可能性があります。
というのも、「手術前の洗浄で次亜塩素酸水を使うので殺菌効果あり」と謳っているサイトを見かけますが、その場合、次亜塩素酸水の流水で洗うことが条件になります。
次亜塩素酸水中の次亜塩素酸はタンパク質などの汚れに触れると容易に塩素に分解してしまい、その効力が一瞬で失われてしまいます。
つまり・・・手指にシュシュっとスプレーするだけでは・・・ウイルスを撃退する前に分解されている可能性が否定できないということです。
なので、現時点では次亜塩素酸水は手指消毒薬として過信しすぎないことを追記しておきます。
次亜塩素酸水にしても次亜塩素酸ナトリウム水溶液にしても・・・あくまでも設備消毒用と思って使用することをオススメします。
うがい
うがいも重要な予防対策のひとつです。
ウイルスが口の中に入ったらその時点で手遅れでは??と思いますが、粘膜や皮膚などには病原菌の侵入を防ぐための「バリア機能」というものがあります。口腔内のような粘膜は乾燥するとバリア機能が低下してしまうので、のどの乾燥予防のための定期的なうがいはとても有効な予防法といえます。
上記の通り、粘膜の乾燥を防止するのが目的なので、うがい用消毒薬を使う必要はありません。水でのうがいで十分です。
消毒薬などを用いたうがいを過度に行うと、粘膜組織を傷つける原因にもなりますので注意してください。
拡散防止
次にコロナウイルスの拡散を防ぐための方法を紹介します。
- 咳エチケット
- マスク
- 行動範囲を狭める
マスクは感染予防では??と思われる人も多いかと思いますが、実はマスクは感染予防効果はそれほど高くありません。
行動範囲を狭める(限定化する)
先にも説明しましたが、コロナウイルス(実はインフルエンザにも言えること)は不顕性感染という無症状なので感染に気付いてない状態があり、不顕性感染者も人にうつす可能性があるといわれと言われています。
つまり大事なことは「自分は感染していない」ではなく「自分が感染しているかもしれない」という気持ちで回りにうつさない気づかいをすることが重要なのです。
自身の行動範囲を必要最小限にとどめることで、仮に感染していたとしても被害を最小限にとどめることが可能です。とにかく今はみんなで我慢しましょう。
咳エチケット
新型コロナウイルスの主な感染は咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを吸い込む飛沫感染とその飛沫したウイルスがドアノブなどに付着し、他の人が汚染されたものを触ってうつる接触感染ですが、どちらの原因も口からウイルスを飛沫させるのが原因です。
最近は風邪拡散防止の一環で咳エチケットが広く言われていますが、これは飛沫感染する新型コロナウイルスにも有効な拡散防止手段です。

くしゃみや咳はついつい手で口を覆ってしまいますが、実はこれだと手にウイルスが付着して接触感染を起こす原因となります。とっさの時は袖で口や鼻を覆うように習慣づけましょう。
マスク
4月4日、香港大の研究チームが感染拡大防止にマスクが有効という研究結果を発表しました。
マスクについては昔から
非感染者がマスクをするよりも、感染者がしたほうが拡散防止効果が高い
と言われています。
ウイルスは非常に小さいので、サージカルマスクでもウイルスを100%ブロックすることは困難です。100%に近いウイルスブロック効果のあるマスクは・・・相当息苦しいです…
では、マスクは必要ないの??って話ですが、新型コロナウイルスの場合、不顕性感染や潜伏期間中の感染の可能性が否定できないため、みんなでマスクを使うことで一定の拡散防止効果はあると思います。また、予防効果もゼロではありません。
現在国内の医療現場でマスクがとても不足しています。感染リスクの高い場所から優先的にマスクを供給していくと、一般にはなかなか出回らない状況がしばらく続くと思います。
マスクを求めてドラッグストアに並ぶのも感染の観点からみればあまりお勧めできません。ですので、マスクが入手しにくい今は手作りマスクで乗り越えることをオススメします。実は手作りの布製マスクでも、フィルターを入れることでサージカルマスク並みの性能にすることも可能なのです。
立体布マスクの作り方
テレビやネットなどで紹介されている布マスクですが、布だけだと目が粗いため、正直に言って予防も拡散防止も効果が薄いです。フィルター性能を高めるためにはサージカルマスクで使われている不織布が必要です。次に紹介する香港のクウォン博士が開発した手作りマスク「HKマスク」は不織布フィルターとしてティッシュペーパーやキッチンペーパーを使用することでN95マスク並みの効果を出すことが可能と研究データとともに、型紙も無償で公開しています。
以下で紹介されているような手作りマスクも、ティッシュペーパーなどのフィルターを入れられるように工夫すれば、クウォン博士のHKマスク並みの性能になると思いますので、作りやすいと思った方法で問題ないと思います。
マスクは洗い替えも準備して一人2~3枚はあるといいと思います。
新型コロナウイルスの各種相談所
最後に、コロナウイルス関連のお役立ち情報のリンクを貼っておきます。
納税の延長や企業の支援などの相談方法などの各種相談窓口についてまとめられています。いざというときのために確認してください。
最後に・・・
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここに書かれていることは、特別なものではなく普段からの感染防止に役立つ情報です。新型コロナウイルスも、基本的には風邪ウイルスです。なので普段行う感染予防対策をしっかりと行うことが何よりも大切なのです。
ただ、普通の風邪と違うところは、新型なのでみんなが免疫を持っていないため感染リスクが高いということ。また感染してから免疫ができるまでに時間のかかる高齢者や肺疾患を持った人は重症化しやすいということです。
そういった人たちに感染を広げないためにも、自分は感染していないから大丈夫とは思わずに、もしかしたら感染しているかも(不顕性感染かも)と思い、感染予防だけでなく感染する前から拡散防止に努めることがこの騒動を早く終息させる方法だと感じています。
- 手洗い
- うがい
- 消毒
- 三密を避ける
- 咳エチケット
- マスク
- 行動範囲を狭める
感染爆発を起こし日本の医療が崩壊しないよう、みんなで協力してこの危機を乗り切りましょう。
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