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食中毒の基礎知識~ボツリヌス菌に注意~

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燻製作りは楽しく美味しい趣味ですが、食中毒には気をつけたいものです。
自己責任とはいえ辛い思いはしたくないですからね~
食中毒の基本的な考え方は下の記事で紹介していますが・・・

ぶっちゃけ、新鮮な食材を使って衛生管理さえしっかりしていれば、食中毒はそうそう起きるものではありません。

でもですね・・・

ひとつだけ気をつけたい食中毒があるんです・・・

その名も「ボツリヌス食中毒」です。

ボツリヌス食中毒はその名の通り、「ボツリヌス菌」が産生する「ボツリヌス毒素」が原因で発生する毒素型食中毒でして、語源はラテン語のbotulus(腸詰・ソーセージの意)からきており、19世紀にソーセージやハムを食べた人の間でおきた食中毒のためこの名前がついたそうです。
症状は吐き気、視力障害・言語障害などの神経麻痺で、重篤なケースは呼吸麻痺で命に係わる重い症状が出ることもあります。
実はこのボツリヌス毒素は自然界最強!と言われている毒素で、フグ毒で有名な「テトロドトキシン」よりも全然強いんです。
なので、ボツリヌス食中毒だけは絶対に引き起こしたくないですね~

当然のことながら食品製造業は発生防止のための法規制がされているので、めったなことでは発生しませんが、手作りの世界までは法規制は届きませんので注意が必要です。

まずは食中毒の原因菌と予防法を整理してみると・・・

食中毒の原因菌

①動物の糞便から感染しやすい「サルモネラ菌、大腸菌」
②人の皮膚の常在菌で化膿の原因菌「黄色ブドウ球菌」
③海産物に多い塩分大好きな「腸炎ビブリオ」
④過酷な環境で生き抜くことが可能な「ボツリヌス菌・ウェルシュ菌」

こんな感じに分けることができ・・・

①は熱に弱いため75℃以上で数分間加熱が有効な手段

②は菌は加熱に弱いが、食中毒の原因は菌が産生する耐熱性毒素のため、加熱は無意味。化膿の原因菌なので、傷のある手で調理しないことが予防につながる。

③は塩蔵による殺菌は無効で熱にも強いが、真水と酸に弱いため、食材を真水や食酢で洗うことで予防できる。

と素人でもできる、はっきりとした対応策があるのですが・・・

④に関しては・・・残念ながら・・・ないのです・・・

目次

ボツリヌス菌の性質を知る

ボツリヌス菌やウェルシュ菌は他の菌と何が違うかといいますと・・・

①酸素が苦手で無酸素状態で増殖する「嫌気性菌」である
②自身の増殖条件に見合わない過酷な環境では「芽胞」を形成する

という特徴があります。

細菌も生き物ですから通常なら生きるために酸素が必要です。なので真空パックは保存という意味では優秀な方法なのですが・・・
ボツリヌス菌はあまのじゃくな性格なので・・・酸素がないところでは逆に元気になり、増殖が活発化します
つまり・・・ブロック肉の表面に付着しているときは酸素にふれているため元気がないボツリヌス菌も、ひき肉の中に紛れ込みギュウギュウにまとめられると、ひき肉内部は無酸素状態になり、ボツリヌス菌が元気に増殖し始めます。

作業工程から、ソーセージやサラミ・ハムなどはボツリヌス食中毒を引き起こしやすい料理といえますので注意が必要です

また、ボツリヌス菌にとって過酷な状況(有酸素状態・高温など)になると、芽胞」という強固なバリアに身を包んだ状態に変身し、死なずに耐え続けることが可能なのです。
※芽胞状態の時は増殖しません。

ちなみに、ボツリヌス菌は土壌中などの自然界に普通に存在する菌です。酸素の豊富な自然界では芽胞の状態で存在しつつ、酸素にふれない環境に入り込むとバリアをほどき、一気に増殖を始めます。

ボツリヌス菌の殺菌方法

ボツリヌス菌の殺菌方法は以下のとおりです。

ボツリヌス菌の殺菌方法

【ボツリヌス菌】
中心温度が120℃以上で4分間加熱
中心温度が100℃程度だと6時間以上の加熱が必要と言われていて煮沸による殺菌は困難です。

【ボツリヌス毒素】
中心温度が80℃で30分、100℃で数分以上加熱
これで毒素を失活(効果がなくなる)させることができるといわれています。

ボツリヌス菌食中毒に気をつけたい自家製料理というとソーセージなどが上げられますが、肉類(タンパク質)の性質として・・・

55℃を超えるとコラーゲンが溶け始め肉が柔らかくなる
60℃を超えるとたんぱくの変性が始まり肉が赤⇒さくら色に変色する
65℃を超えると旨味を含んだ肉汁が外に出始める(旨味が逃げ始める)

なのでソーセージなどの肉質が固くならないように70℃付近で加熱するケースが多いと思います。でもそれだとボツリヌス菌の殺菌はできません。

食中毒予防の三原則に

食中毒の三大原則

●汚染を広げない
●増やさない
●加熱殺菌をする

というのがありますが、加熱殺菌が困難な以上、汚染を広げないことは当然のことですが、それ以上に「増やさない」を意識することが大切になります。

ボツリヌス菌を増やさない対策法とは

ボツリヌス菌は無酸素状態で増殖を始めますので、ソーセージ作りなどで菌を食材の中に混ぜ込んでしまったら・・・

菌が増殖する前に食べるべし!

これが鉄則です。
自家製ソーセージを作ったらなるべくすぐ食べるようにしましょう。

また、製造から消費までを菌の増殖が穏やかになる10℃以下に保つことも大切です。

手作りソーセージならこれで足りますが、例えばドライソーセージ・サラミなどのような製造工程が数日に渡るようなものの場合は上の対策では不十分です。ボツリヌスは本当に怖い菌なので添加物の力を借りて菌の増殖を抑えないと、まず作れないと思ってください。

以下は専門的知識が必要な領域のためドライソーセージ作りの参考にされることはお勧めしません。食中毒を起こさないための衛生管理って大変なんだな~という勉強のために記載させていただきます

自家製の場合は無添加にこだわりがちですが、命とどちらが大切か?と聞かれたら・・・さすがに命なので・・・ドライソーセージを作りたいなら、ボツリヌス対策は万全にしてください。

ボツリヌス菌の増殖抑制効果のある添加物としては「亜硝酸ナトリウム」が世界的に使用されています。

日本でも厚生労働省の基準で非加熱のソーセージ等の肉加工品は、防腐剤としての亜硝酸ナトリウムの添加が義務付けられていますが、残留量が多いと急性毒性(中毒症状)や慢性毒性(発がん性)が懸念されるため、厚生労働省の基準として以下の数値が定められています。

【完成時に許される亜硝酸根(亜硝酸イオン)の残存量】

肉加工品や鯨肉ベーコンは重量の0.007%(70ppm)以下

いくらやすじこ、たらこなどの魚卵は重量の0.0005%(5ppm)以下

※日本で定められている規定は、亜硝酸根(亜硝酸イオン)としての残存量のため、亜硝酸ナトリウムとしてはmol比で計算すると1.5倍が許容範囲になります。

添加物使用基準リスト(平成29年6月改正)

亜硝酸ナトリウムは劇物に指定されているため通常は入手できませんが、ソーセージなどの加工食品を作る場合は、塩化ナトリウムで濃度調整された食品添加物を使います。。

プラハパウダー#1について
【組成】
亜硝酸ナトリウム 6.25%、塩化ナトリウム 93.75% 含有

【使用方法】
キュアリング剤として、通常、肉または魚約11.3kgにつきプラハ パウダー#1 を 約28.3gを使用が目安。
※AmazonのHPより抜粋

上記製品ははFDA(米国食品医薬品局)と米国農務省の規則に準拠していて、米国の基準を満たしている商品なので、使用量云々に関しては米国の基準の可能性があります。FDAが定める亜硝酸ナトリウムの安全基準は日本よりも緩いため、日本における適正量とは違います。
また、亜硝酸ナトリウムは塩蔵・加熱等により残存量が減少することが知られていますが、最終的な亜硝酸ナトリウム残存量の理論的な計算は困難なため、適正量を正確に求めることは困難です。

【参考】FDAが定める亜硝酸ナトリウムの残存基準値
食肉中の残存基準値   200ppm
マグロの燻製      10ppm
ギンダラ・シャケの燻製 200ppm
※日本の基準と比較して1.5~2倍程度の差があります。

ですので上のキュアリングソルトを使った方法は正直、専門職の方以外はお勧めできません。あくまでも食中毒管理ってこんなにも大変なんだ~という知識としてとどめておいてください。

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この記事を書いた人

DIYやアウトドア、料理が大好きなおっさん薬剤師。化学は好きだけど添加物は嫌いです。なので手作りが大好き!
家族が喜ぶいろんなレシピを公開中です。

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